最初に PalmPilot と出会ったのは,1997年7月ごろ,ちょうど PDA を探していたころである. 当時の PDA といえば Zaurus と相場が決まっていて,HP200LX と MobileGear が パワーユーザにウケていた状態. (Palm)Pilot はというと,まだ世に知られていない上に50000円台と高く, ペン認識方法が独自のもの,キーボードがない,日本製でないという, 従来の PDA の考え方(電話帳+メモ+スケジューラ)を持って購入するには, 壁が高い機種の一つだった.
PDA を探していた理由は,LibrettoがPIMがわりに 使えなかったためである. Libretto を何回か DOS モード高速起動を試してはみたのだが, その場でメモを取る用途としてはやはり不向きだった. しかし日常的金欠な私は,PalmPilot を含めて PDA の価格はあまりにも高価であり, それだけ使いこなすという確信がなかった.
結局,その年の11月に Wiz(PA-Z800) を中古で購入することに決定. Z800 は PIM としては一通り機能を持っていたので,そこそこ使うことが出来ていた. しかし,PC とのデータのやりとりとカスタマイズは想定されていないため, 実際に使っているとどうももどかしくなる. 使っているうちに,なんとなく自分のお気に入りの手帳として Z800 を使うには 難しいと認識するようになった.そうなると Z800 は保有している意味がない. 結局,Z800 は数ヶ月で中古売却することにした.
次に,PalmPilot に出会ったのは 1998年6月,ちょうど PalmIII が新発売になった時期である. 新製品が出たことで,日本橋 T-ZONE で PalmPilot Professional と J-OS Pro のセットが山積み販売されていた. Z800 を売却して以来,各 PDA についていろいろ調べていたのだが, PalmPilot はプログラムを自作してインストールが出来ることが判明. これは 自称「暇プログラマ」としては,黙ってはいられない(^^;) そのときにちょうど目にしたのが前述の山積み販売である. 価格は単体が 32800円,J-OS セットが 38800円だった. PalmIII は54800円とやはり高い.赤外線とOS の違いだけでこの差は埋まらないと判断し, ターゲットを PalmPilot+J-OS に絞った....とはいえ,その場でかなり迷った. 自分の財布との攻防が1時間ほど続く....とその時,目の前で客が1台購入していった. あと2台しかない.考えて考えてついに購入に踏み切ったのだ. 晴れて PalmPilot Professional(Cross スタイラス付) + J-OS Pro 2.0 を手に入れたのだった.
最初は PalmPilot は Z800 と同様にメモがわりにしつつ,各サイトから Palmware を 落としてインストールして消して,の繰り返しだった. 最初はいろいろあって楽しかったのだが,一通り試したところで飽きてしまった. WorkPad(10U) の発売とともに 日本でもじわじわと Palm が知られ始めたころだが, Palmware はそれほど発表されていないし,紹介もされていない. X68k でも初期のころは Freeware を集めてるうちにただのゲーム機になってしまった 経緯があったのだが, その教訓を生かすためにも,PalmPilot の次なる使い方を考える必要があった.
ということで,PalmPilot を Z800 の置き換えとして,PIM 用途で使うことにしたわけだが, やや私的な壁があった.手帳との置き換えを考えた場合, 手帳に対する PDA の優位性は情報を編集加工可能であることや情報のポータビリティにあるが, 同時に電力,操作性,反応速度,自由度,携帯性が全てある水準を満たさないと意味がないと考える.
携帯性は非常に重要.鞄から取り出して使うなら,手帳と変わりない. 結局,PalmPilot は持ち歩くアイテムとして使わなくなってしまった.
※注: 最近では,ネット接続やさまざまな情報リソースのViewerとしての機能も問われるはず.
次に,PalmOS アプリケーションのプログラミングを考えることにした. X68k では開発環境を手に入れることで,プログラム製作に移行することが出来た. PalmPilot では CodeWarrior SDK が基本である. しかしそれはあまりにも高価だった. そこで出て来たのが,GCC pilot SDKである. FreeBSD にも package として porting されているので,環境はすぐに作ることが出来た. Emulator もあるので,実機にいちいちインストールする必要はない. 問題はドキュメントとサンプルソースだけである. Web をひたすら探し回ることで,なんとか Palmware (のようなもの) を作れるレベルになった.
Palmware をどんどん詰め込んでいくと,1MB のメモリは全然足りない. これを解決する方法は1つ.メモリ増設である. 増設には,3Com 純正の Upgrade Kit と,サードパーティによるメモリ増設の2つの方法がある. 前者はメモリ増設以外に PalmOS 3.0 と 赤外線通信が付いて来る. しかし,この当時はこれらの機能は絶対に使うはずがないと考え, サードパーティのメモリ増設キットにより手作業で増設する ことにした. もちろん,Upgrade Kit が高価であると言う問題もあったのだが, これが間違いと気づいたのはかなり経ってからのことである.
PUGO は日本で初めて結成された Palm/WorkPad系ユーザーズグループらしい(まるごとPalmによる). 結成は1998年7月というから,PalmIII が出てまもなくといったところか. 買ってすぐの私としては,Webでの情報源しかなかったのだが,さすがにこのころは Palm を 扱ったページは少なく,自分でもこのページを作った割には何も書けなかった状態だった.
そんな時に,どこから聞いたのかは忘れたが,ユーザーズグループが大阪に出来たという話である. 会合は実家の徒歩3分のところで行われるらしく, Palm ユーザーがまだ周りにいないこともあって, ちょっと参加したくなった.とはいえ,見知らぬところにいきなり飛び込むのは勇気がいるし... その上,当時Palmさえもプログラム指向を強く持っていた私としては, Palm の使い方やアプリの情報を共有する必要があるのか? という見方もあって,第一回の定例会は 参加を見送った.
しかし,Palm をネタに話が出来る環境なんて,この当時日本でもほとんどなかったに違いない. PDA なんてのは日常使えてナンボの世界である.やはりこのまま狭い情報源の中, 限られた環境で使い続けるのもなんとなく悔しい気がして,第二回の定例会から参加することにした.
実際に参加してみると,周りは皆Palmユーザ(あたりまえだ)なのに驚かされる. それに,人それぞれが常用するプログラムも使い方も全然違う. Palm 1台持ってるだけで,これだけ盛り上がれることにも驚かされた. 何回も参加することで話題についていこうという気にもなるし, いろいろ Palm の使い方を研究したくもなった.
とはいえ,(当時)さすがに平日の夜にバイクで山越えて参加するのは辛くなって, 結局,2,3回参加したくらいで PUGO-ML もそれほど発言することもなく, メンバーの入れ替わりや新規参加者の増加につれて, なんとなく参加してるときでも誰?状態になりつつあった. ちょうど PalmPilot を PDA として積極的に使う契機を失ったころでもある.
WorkPad (30J/40J)が発売されて以来,日本でも Palm ユーザがどんどん増えていった. そこで必然的に行われるようになるのが,ビームによる名刺交換である. どこに行っても Palm を持っていれば行われる名刺交換. 私の PalmPilot だけはその輪に加わることが出来なかった. 挙げ句の果てには各地で「ビーム出来ないPalmユーザ」という屈辱的称号まで 与えられてしまった.
長い間そのまま使い続けていた PalmPilot であるが,PIM の問題,ビームの問題が 解決しないことには活用範囲が広がらないと考え, 携帯性を考慮していくうちに UpgradeCard の選択枝は消滅し,PalmV か WorkPad c3 を 新規購入することを選んだ.
そんなことを考えていた1999年末,SONY の PalmComputingPlatform の参入が PalmSource で 発表された.同時に Color Palm の計画が公開された. 私にとってはこのニュースはあまりいいニュースではなかった.
SONY で PDA といえば思い出すのが MagicCap だ.期待してはいたのだが,実装をオブジェクト指向的に 隠蔽してしまう仕様はまだ早すぎた.というより重いソフトを強引に遅いマシンで動かすには 課題が多すぎた.Microsoft 的にマシンの高速化で解決していたとしたら,Palm の思想と 相反する物がある.このニュースでそんなことを考えてしまった. さらに,私は VAIO のデザインは好きではない.Palm が VAIO の一部に取り込まれて 重いソフトを載せられて日本中で広まってしまうことを恐れている.
それだけではない.Apple も Palm に触手を伸ばしている.Apple といえば NewtonMessagePad だ. Newton はコンセプト的にはいい線をいっていたが,Apple も重いソフトを実装する危険性がある. そもそも,Palm は白黒で十分だ.Color にするのは勝手だが,全て Color に置き換えて 実装を重くすることに問題がある. 今の Palm の優位性を保つことが出来るのだろうか...
※注: Apple は結局 PalmOS 機を作らない事を明言した.
...などと考えているうちに,今の問題を解決しつつ新しい Palm に置き換わる前に 新規購入しておいたほうがいいと考えた. このときちょうど発表されていたのが,Handspring の Visor と 3Com の PalmVx である. Visor は価格は安いがまだ課題を抱えている.裏の拡張スロットは付けて欲しかった機能の 一つではあるが,その拡張性には疑問がある. PalmVx は 8MBに増設されて 20MHz に速度を上げたものである. これで価格が折り合えば何の問題もない.やはり価格に問題があった. T-ZONE や イケショップでの販売価格 は 74800〜79800 円.今時の PC 組み立てが可能な価格だ. PalmV にするか...と思っていたとき,Outpost.com に PalmVx が掲示され取り扱いを始めた.価格は $429.95 だ.$1 = 106yen の円高の影響もあって, 早速購入することにした.
PalmVx は 1週間ほどで到着した.おまけのケース取得権は US/Canada only なのでパスして, 早速 PalmVx を使ってみる. 携帯性は問題ない.電池は充電式に変更されて心配になったが,10日程放っておいても ほとんど放電しなかったので問題なし.ビームも最初は J-OS III Localizer の影響で 問題があったが,PalmOS 3.3 対応版に 置き換えることで解決した. ということで,現在では PalmVx を常に携帯して使うようになっている.
次の課題は外との通信だろう.SnapConnect/c3 や通信インフラは高価なので, もう少し様子を見ることにしよう.
※ ちなみに,私が購入した直後,Outpost.com 他,米国の通販サイトは PalmOS 搭載機 の日本への輸出を止めてしまった.おそらく IBM が日本の正規ディストリビュータなので, その市場に影響を与え兼ねないということだと思われる. しかし,SONY の Palm への進出により,PalmVx 相当の WorkPad は戦略的に中途半端な位置で あると IBM が考えるなら,次の日本語版は Color Palm までないかも知れない. ちなみに,Color Palm 以降は,SONY が 個人向け Palm,IBM が 法人向け Palm に販売レンジが しぼられると思われる.
PUGO幽霊会員を続けていたのだが, 転機になったのは PalmVx を購入してからだろう. PDA として本格的に使うようになっただけでなく, ビームによるコミュニケーションも可能になり,最新機を買うに当たって情報を集めることで, 現状のPalm環境や知識がある程度追い付けるようになったのだ. それまでは全く話題について行けず,ビームも出来ないのでただただ傍観しているだけだったのだが, やっとPalmの世界に再び「参加」する契機ができたわけである.
PalmVx は(新しくフラッシュ4MB版や日本語版は出たが)かなり気に入って使っているので, 次に買うのはおそらくカラーのPalmV系あたりかと思っていたのだが, どうもそうではないらしい.
ソフマップの9800円WP30J購入権が当たってしまったのだ. ちょうどアプリを OS3.1 で動作させたとき特有の問題が全然解決できない上に, PHS 内蔵カードが噂される中,III 系の周辺機器が使えない状況に危機を感じて いたりしたところだった. まさか(予想確率1/25〜1/30?)に当たるなんて考えてなかったのだが, 上の状況により素直にゲットすることにした.もちろんどこかに流したりすることはない.
ということで,思いがけず3台目のPalm,それも初の日本語版を手に入れることになったのだ. ああ,英語版で揃えるポリシーが...(そんなもんあったんか)
しかしながら,Vx を持ってるために 30J の優位性が全然なくなってきて, 結局は手放してしまった. とはいえ,Vx を常用してる身としては何かテストしたいときに,もう一台ないのは心許ない.
最近,Visor が飛び抜けて売れてる理由が全然わからないのだが, 私的には USB による高速 HotSync と,何かできそうな SpringBoard Slot の存在に かなり興味を持った.さらに最近では 英和/和英辞書も付いている. 元々 8MB もあるおかげでおそらく困らないはず.困ったらさらに 8MB 足せばいいのだ (バックアップモジュールはあまり意味がないと思う...Sync すればいいんだし).
とある日のこと,T-ZONE なんば店に寄ったときに,品薄で入荷されなかった Visor/Blue が1つだけあることを確認してしまった.数分考えた挙げ句,さくっと購入したのだった.
Visor から Color を求めて Visor Prism に交換したものの, 結局分厚さにうんざりしてそれも手放してしまう.
そのころ,日本では Sony の Palm 機が徐々にシェアを伸ばし,Palm Inc. よりも 早い周期で新機種を発売してついには日本で Palm 機といえば CLIE を指すように なってしまった. Sony は Simply Palm 路線ではなく,完全に多機能マルチメディア端末路線を取っている. それは悪いことではないが,ユーザーはシンプルな端末も求めているはず. そしてそれに応える形で T600C/400 が登場した. OS4.0 機ということもあり T600C を即購入.まずまずの使い勝手で久々に使える端末だった.
しかし,CLIE はさらに進化してウィングスタイルの NR,ついで NX が登場, NX ではついに DragonBall VZ から PXA250(StrongARM) になって OS も 5.0 になった. CF スロットがついて Air-H\" が使えるようになると,使い方も広がる. さらに液晶エリアが広がるので,いろいろ面白いことができそうでもある. 軽さの面で T600C で満足していたものの, やはり新端末の面白さを考えて NX70V を購入することになった.