CPU migration
Linux では SMP 構成をとる場合,できるだけ CPU を公平に使うようにスケジューリングされます.そのため,各プロセスの CPU 使用率を元に再スケジューリングのタイミングでプロセスの CPU migration (CPU 間の移動)が発生します.
migration で CPU 間をプロセスが移動するためには,一度動作を止めてコンテキスト(レジスタや状態情報など)を移動させて再開,という処理が行われますが,キャッシュ共有する「CPUコア間」に比べて共有しない「CPUクラスタ間」は移動にかかる時間が掛かるため,移動に重みづけしてスケジューラが次の CPU を判断します.
migration 動作を見る
ではプロセッサの migration でどうやって動いてるんだろう,と*手っ取り早く*調べたいと思ってたところ,
busybox の ps では CPU 割り付けが扱われないため,procps パッケージの ps を使うと確認できました.
$ ps -eo pid,psr,comm
ということで,下記のような shell script で回しておけば,出力ログを加工してグラフ化することで遷移の可視化もできます(かなり古典的手法ですが).
#!/bin/sh ( while :; do ps -eo pid,psr,comm | grep $PROG; done ) | awk '{print $1,",",$2}'
CPUやスケジューリングポリシーを指定
プログラムで直接 sched_setaffinity() や sched_setscheduler() を呼び出せばいいのですが,常にプログラムを書き換えられるわけではないので,できれば shell で指定できる方が都合がいいです.util-linux パッケージを使うと可能になります.
taskset で起動プロセスの CPU を固定することができます.例えば CPU1 でプロセスを起動したい場合は
以下のように指定します.
$ taskset -c 1 PROG
chrt で起動プロセスのポリシーを指定することができます.例えば SCHED_FIFO の priority=50 で
起動したいなら次のようにします.
$ chrt -f 50 PROG
また,kernel の起動オプションで 'isolcpus' を付けてCPUを指定すると,そのCPUはプロセスのCPU割り付け対象から外されます.全ての CPU を指定すると全て CPU0 でプロセスを起動するようになります.SMP 構成ながら Asymmetric に CPU を使うこともできそうです.
isolcpus=0-3
余談ですが...
SMP 構成の組込みシステムの場合,応答速度や処理量で破綻する可能性があるのであまり CPU を移動するのはうれしくないですが,特定の CPU に処理が集中するのも不利になるため適度に分散させたいため,スケジュールポリシーの選択は重要になってきます.
SCHED_FIFO,RR や CPU 割り付けを固定で行うこれまでのリアルタイム設計は複雑なシステムになるほど不都合になるため,SCHED_DEADLINE (EDF) や新たに提案されている Energy-Aware などの heuristic スケジューリングにも期待したいところです.
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